「あれがクレーターなの」
「世界有数の大噴火口跡で、動物、鳥類が殆んどといっていいほど、いるんだよ」
「まあ、美しい!」
「まるで別世界のようだ。僕たちが住んでいる地球に、
こんな所があるなんて信じられないよ」と口々に驚嘆した。
「沈まぬ太陽 (アフリカ篇)」 山崎豊子・著 新潮社
南北16km、東西19km。切れ目ない壁(外輪山)に囲まれた噴火口にサファリカーはよじ登った。
底の部分が標高1800m、火口縁が標高2400m。深さ600mの大きなお皿が眼前に拡がっている。
ンゴロンゴロとは、マサイ語で大きな穴の意味だ。
クレーターは広大なカルデラで、ロッジのベランダに立つと約250平方kmに及ぶ
火口底が見渡せる。ちょうど大きなおわんの縁から、その底を眺めるような感じだ。
「アフリカ ポレポレ」 岩合日出子・著 新潮文庫
サバンナ的な草原が広がり、マカトゥーという塩湖があり、レイラの森というジャングルもある。
1万4000頭のヌー、5000頭のシマウマ…数え切れない動物たちが「野生動物の楽園」に棲む。
人間という動物が住んでいない領域。ここに棲む大部分の動物はクレーター内で一生を終える。
ンゴロンゴロ・ワイルドライフ・ロッジは、その火口縁のいちばん高い位置に陣取っている。
Wingと呼ばれる客室は横に拡がり、どこからもクレーターを見下ろせるように建てられている。
世界中のナチュラリストがここに集う。ここから動物たちの生き様を発信する。
サファリカーは英国車が多かったが、現在は日本車が圧倒的である。予備タイヤは2本ずつ装備。
バッファローが「ぐずぐずしていないで、早くおいでよ」とホテルの庭に出迎えてくれた。
さあ、ランチボックス(弁当)を持って動物たちの楽園に出発だ。