「マサイの男はライオンを殺さないと
一人前と認められないという掟がある。」神戸俊平
キベラからホテルに帰って、親子3人で夕食をとった。互いに「こんな一日って、生涯でそうあるものじゃないだろう」と感激のほとぼりが冷めないまま語り合っていた。と、夜10時頃だった。この日を締めくくるに相応しい人物がホテルを訪れてくれた。
神戸俊平さんである。彼を師事する女子大学生を連れて。聞くとお住まいが我々のホテルのすぐソバだという。
ウペポの発起人として
早川千晶さんと神戸俊平さんの名が並んでいる。佳織は仕事の関係があるが、我々は初対面の方なので、ガイドブック「アフリカ」(旅行人)の執筆者欄を転記する。
「かんべ・しゅんぺい。1946年、東京都生まれ。獣医。マサイ地域でツェツェバエ・コント
ロールやボランティア活動に取り組む。著書に『サバンナの話をしよう』(時事通信社)など。」
地表から土が剥ぎ取られるように土煙が舞って行く。荒涼とした風景を見やりながら、
兵庫はこの生活を何年続けて来たのだろうかと思い返した。
元来、動物が好きで獣医になったものの、封建的な研修医の生活に拘束されるのが
我慢できず、アフリカの野生動物を一目、見たいと思いたって、ナイロビに渡った。
アフリカを旅しているうちに、日本に帰る気持ちは失せ、ナイロビ大学獣医学部で
ケニアの獣医師免許を取得した。引き受けたマサイ部落での診療は無償だが…
「沈まぬ太陽 (アフリカ篇)」 山崎豊子・著 新潮社
このベストセラー本に「兵庫」という名前の獣医で神戸俊平さんはモデルになっている。描かれ方にフィクションもあるが、山崎豊子は彼に「アフリカ大地の匂い」を感じたのだろう。
神戸俊平さんはケニアに来られて、すでに30年以上になるという。
いろいろな活動に関わってこられたそうだけれど、今、一番に気になるのはタンザニアの
アルーシャからンゴロンゴロ自然保護区の間の道を、日本政府のバックアップで日本のゼネコンが建設中なのだが、これが動物たちの生態系を崩すのでは…という問題だそうだ。
我々はこの日の4日後にンゴロンゴロ自然保護区に行ったので、上にその写真を添えます。
関連して、美枝子が今年5月に行ったエクアドルのガラパゴス諸島の世界最大の亀「ゾウガメ」の虐待の話しをしたら、結構、興味深そうに聞いてくださった。同じ赤道直下の国とは言いながら、地球儀で見れば反対側の地域。同じように動物たちのイジメの話しがあるんだなぁと思う。
キリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空
僕は風に向かって立つライオンでありたい
ところで、皆さん。さだまさしの『風に立つライオン』という曲をご存知であろうか。さださんの曲は物語り性の強い曲が多いわけだが、そんな中でも傑作はこの曲ではないだろうか。
この曲はズバリ、神戸さんの若い頃をモチーフにしている。そして、神戸さんは今も若い。最近お書きになったものの中に、それらしい文が見つかったので、転記させていただきます。
「どうしてサバンナを歩くマサイの目はあんなに生き生きと輝いているのだろう」