旅行社でもらってきたアフリカ観光パンフレットの象やライオンの写真を見ていたら、
ユネスコとニエレレ、そして、グリーンピースの若い二人の文章が脳裏に浮かんだ。
今回の旅行の基本資料として載せます。
「アフリカ象の悲劇」
ヨーロッパ人がアフリカの奥地に初めて到達したころ、象の数は400万頭あまりであった。
20世紀初頭、象牙細工が一大ブームとなり、毎年5万頭の象が殺されるようになった。1927年、象狩り禁止の法律を制定し、保護するための国立公園を設定した。しかし、現在もアフリカ象の危機的状況は変わっていない。アフリカ諸国の一部、特にジンバブエでは密猟が今なお跡を断たない。表向きには象牙の取引は禁止されているが、アフリカの闇市場には堂々と出回っている。
ヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国、日本などの国々では象牙の輸入を厳しく規制されているが、台湾、中国などの国々では今でも大量の象牙を輸入している。タンザニアやケニアに居を定める象牙業者の数は次第に増加しているのが現状だ。アフリカの国々から細工前の象牙が輸出されて、それをアジアの地で象牙細工品に加工されているのである。
1990年、ようやくアフリカ象は種の保護に関するワシントン条約の絶滅危機種の動物リストに載せられて、公式には遵守を表明しているが、守られているとは言えない。慢性的な財政難に苦しむ国々にとって、象牙は今も「白い金」であり、外貨を獲得する絶好の資源なのである。
アフリカ象の数が劇的に減少している。もうすぐ象がいなくなるかもしれない。
「ユネスコ世界遺産 中央・南アフリカ」 UNESCO,Plaza&Janes,Verlagshaus,講談社
「
アルーシャ宣言」
野生生物の存続は、アフリカに住むわれわれ全員にとって重大な関心事である。各地の野生地域に棲む様々な野生生物は驚異と霊感の源泉として重要なばかりでなく、われわれの天然資源として、また、われわれの将来の暮らしと福利のために欠かすことのできないものである。
わが国の野生生物について信託統治を引き受けたわれわれは、厳粛に次ぎのことを宣言する。
われわれはこの豊富で貴重な遺産が、子々孫々に至るまで、わが国民が間違いなく享受できるよう、力がおよぶ限り、あらゆることをするつもりである。
野生生物と野生地域の保護には、専門家の知識と訓練された人的資源と資金を要する。
そして、われわれはこの重要な任務を遂行するのに、他の国々の人びとの協力を期待する。
この任務に成功するか失敗するかは、アフリカ大陸ばかりでなく、世界の他の部分にも同様に影響を与えるものなのだ。
起草者:
J.K.ニエレレ 訳者:藤原英司 新潮文庫
「アフリカ ポレポレ」岩合日出子・著より
「ある象の死」
ゾウの死骸が横たわっていた。胴のまわりの地面には、どす黒い血の池ができていた。
肉は腐食動物に内側から喰い荒らされて、頑丈な皮膚だけが骨にへばりついていた。
ハゲワシの糞が死骸をおおい、からっぽになった大きな眼窩が虚空を見つめている。
そのすぐ下に、ゾウの死の原因を説明するものがあった。
牙は消え失せて、ずたずたに切られてできた穴だけが残っていた。
「アフリカゾウを救え」アラン・ソーントン デイヴ・カリー:共著 内田昌之:訳 草思社