オマーンはインド洋からペルシャ湾に向かう交通の要衝に位置しており、
歴史上、人の往来も多かった。アラブ世界と環インド洋世界の接点に位置し、
アラブの一国でありながらも独特な世界を形成してきた。
アジア読本「海のアラブ」 福田安志・著 河出書房
ザンジバルという島を語るには、オマーンという国について知っておいた方が好都合であろうと思い、上掲のような地図を作ってみたりしたのだが、どうもわかりにくい国であるようだ。
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「オマーン」を探ったらサッカーの話題が多いのだが、ひとつには「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」(作者不詳・9〜15世紀)である。その中の「船乗りシンドバッドの冒険」はバグダッドで語られた老人の自慢話しであるが、実際にはオマーンの船乗りの物語ではないかと言われている。寓話的な書き出しだが、最後は象牙で大儲けする実話風な結びになっている。
アラビア半島のインド洋に突き出た部分という地理的条件を生かして、7世紀頃からソハールやマスカットといった貿易港が賑わい、シンドバッドのような血気盛んな船乗りが誕生したようだ。
1498年、バスコ・ダ・ガマがインド航路発見したのだが、アフリカ大陸最南端の喜望峰をまわった後は、すでにアフリカ東海岸を行き来していたオマーン人を水先案内人にして航行している。
ただし喜望峰を最初にまわった西洋人はバスコ・ダ・ガマではなく、侵略的な意味が濃かったとする説が有力だ。その後すぐにポルトガルに占領され、インド洋一帯の交易が支配下に置かれた。
オマーン艦隊によってザンジバルを奪い返したのは1652年である。でも、オマーンは内政が乱れ、アフリカ東海岸一帯を支配するには至らなかったが、なんとかザンジバルだけは勢力を保持することができたのだ。シンドバッドの末裔たちはザンジバルにこだわったのである。
さて、圧巻は1820年頃、サイイド・サイードが10代半ばの若さでオマーン国王に即位した時である。国王自ら艦隊を率いて東アフリカに乗り込み、海岸部一帯を再び支配下に収めたのだ。
そして「アフリカ領土経営」のためにサイード自身がザンジバルに居を移したのである。
オマーンとザンジバル。海を隔てて約4000kmの彼方である。国王自ら故国を捨て、携わった「領土経営」の主な中身は象牙取引と奴隷貿易であったのだが、その非を追究するよりも…
サイードの功績に目を向けよう。インド洋の小さな島であるモーリシャスから
彼が導入して栽培したクローブ(丁子)はザンジバルに安定した収益をもたらした。
そのプランテーションは今も生きており、世界の9割近くを産出しているという。
当然、ザンジバルには香辛料専門店が多く、土産品としてスパイスが人気である。
スパイスのパッケージにご注目いただきたい。
シンドバッドも、サイードも、スパイスも「木の舟」がよく似合う。
写真1〜3…「オールド・アラブ砦」1710年頃、ポルトガルに勝負を挑んだ時のオマーンの要塞。
銃眼を設けた塔もあり物々しい感じだが、ポルトガルを撤退させるキッカケになる。
中央部にはダンスショーも開かれるステージがあり、催し会場的な役割も。
写真4〜5…「パレス博物館」オマーン帝国の都であり、貿易の本拠地。莫大な利益をもたらした
ことをうかがわせる当時の調度品を展示。ここからの港の眺めもすばらしい。
写真6〜7…「驚嘆の家House of Wonder」1883年にオマーンが式典用に建てた宮殿。スルタン
の館と呼ばれ、ザンジバルで一番大きな建物。時計塔があり、大砲も置かれている。
【LOG in BLOG】05.6.28
[84]のLOGで記しましたキベラの子供たちの歌「TWENDE NYUMBANI」という2000円のCDを6月10日のイベント「東アフリカの風」開催時に我々は10枚購入しましたところ、友人などに瞬く間に売れてしまいました。さらに20枚注文しましたら、本日、仙台の
ウペポの石原邦子さんから宅急便で届きました。その荷物の中には
早川千晶さんからの長文のお手紙が入っていました。アフリカらしいお話がいっぱいでしたので、その一部を紹介させていただきます。
こんにちは。CDをご注文くださいまして有り難うございます。
このCDは私のお友達のマラナタ君というコンゴ人のミュージシャンが何日も徹夜しながら、ひとつひとつプレスしてくれたものです。ジャケットのデザインは大西匡哉さんの友人の野中陽介さんですが、作業中に何度も停電して遅々として進みませんでした。印刷はナイロビの下町の零細印刷工場街のルヒヤ人のベンさんというおじさんがやってくれました。そして、CDケースの中への折り込みはワトトスタジオという場所で友人の永松真紀さん達がしてくれました。
ワトトスタジオの石川和博さんは
Future Kids Projectというストリートチルドレンのための音楽教室を開き、CDも出しておられますので、今回、たくさんのアドバイスを頂きました。
たくさんの人の手をお借りして作った手づくりCDです。お楽しみ頂けますと幸せです。早川千晶